引き続き、本です。
重松 清 : 著
徳間書店 : 発行
「帰ったぞ」「帰ってきてやったぞ」・・・ヨージ、38歳はふるさとに帰った。
潰れそうな出版社を辞め、5年生の娘:美奈子と2人で父一人の家に帰った。
ボストン留学中の母親=ヨージの妻=のところには行かないで、ヨージについてきた美奈子。
――準優勝っていっても、まともな準優勝じゃなかったんだね。
――あたし、ずーっと友だちに自慢してたんだけど。お父さんってあと一歩で甲子園に行けたんだよって。
・・・・あと一歩はあと一歩だったんだけどな。
無理に笑って見せたが、帰って自嘲めいた笑顔になってしまったかもしれない(原文引用) 高校時代の野球部に起こった苦い出来事を忘れることはない。
ヨージたちが居たシュウコウの野球部は、
その年、信じられないような、怖いくらいのツキに恵まれて地区予選の準決勝でも勝利した。
が、その晩、
ある事件によって、決勝戦に出ることはできなかった。
世間体・義理の付き合い・噂と見栄に縛られがちな田舎の暮らしから逃れた都会の暮らしだったが、
ふるさとに帰って、かつての仲間もそれぞれに問題を抱えていること、
さらには、美奈子が学校でいじめにあっていることを知るが、何もできない自分の情けなさに戸惑い、
家庭、家族、故郷とのかかわりを見つめなおしたヨージと家族。
重松作品らしい、緩やかな日々の共感と安堵と切なさのある物語です。
因みに・・・
↓「BOOK」データベースでは、
20年前、町中が甲子園の夢に燃えていた。
夢が壊れたとき捨てたはずの故郷に戻った悲運のエースは38歳、目下失業中。
父と、小学5年の娘と3人の同居生活がはじまった。留学中の妻はメール家族。
とまどう日々で見つけたあふれる思いとは。
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